オンライン会議で映像が止まる、声が途切れる。そんなとき「回線が遅いから」と片付けがちですが、会議の安定性は下り速度だけでは決まりません。自分の映像や画面を送る上り速度、応答の遅れを示す遅延(Ping)、遅れのばらつきを示すジッターも関係します。
結論からいうと、考え方は条件で分かれます。①1人で映像会議をするだけなら、各サービスの公式推奨帯域(上り・下りとも数Mbps規模)を会議中に確保できるかが目安。②自分が発表者で画面共有や高画質映像を送るなら、上りの余裕を特に意識する。③家族が同時に動画視聴や別の会議をしているなら、1人分ではなく同時利用の合算で考える。④速度の数字が足りていても途切れるなら、速度ではなく遅延・ジッター・Wi-Fiの安定性を疑う、という順で整理すると判断しやすくなります。この記事は各会議サービスの公式ヘルプに基づく解説で、特定回線の実測レビューではありません。
まず見るのは4つの数字:上り・下り・Ping・ジッター
| 指標 | 意味 | 会議で影響が出る場面 |
|---|---|---|
| 下り(ダウンロード) | 相手の映像・音声・共有画面を受け取る速度 | 相手の映像が粗くなる、共有資料が見えにくい |
| 上り(アップロード) | 自分の映像・音声・共有画面を送る速度 | 相手側で自分の映像が止まる・声が途切れる |
| Ping/遅延(レイテンシ) | データを送って応答が返るまでの時間。単位はmsで、小さいほど応答が速い | 会話の間が空く、話し始めが重なる |
| ジッター | 遅延のばらつき。パケットの到着間隔の乱れ | 音声がブツブツ途切れる、映像がカクつく |
速度測定サイトで表示される数字の多くは下りが中心です。ところが会議は双方向通信なので、自分が送る側の品質も相手の体験を決めます。「自分には相手がよく見えているのに、相手からは自分が止まって見える」という場合は、上り側や遅延・ジッターを疑うのが公式情報とも整合する考え方です。
公式推奨帯域の読み方:Zoom/Teams/Google Meet
推奨帯域は「この数字があれば絶対に大丈夫」という保証ではありません。各サービスが画質や参加形態ごとに示している目安で、実際の使用量は映像レイアウト、解像度、フレームレート、参加人数などで変わります。以下はすべて各サービスの公式ヘルプ・公式ドキュメントに記載された数値です(確認日:2026年10月24日)。単位のkbpsはMbpsの1,000分の1です。
Zoom:1対1とグループで上り・下りを分けて表示
| 形態(Zoom公式・推奨帯域) | 上り | 下り |
|---|---|---|
| 1対1・高品質映像 | 600kbps | 600kbps |
| 1対1・720p HD | 1.2Mbps | 1.2Mbps |
| 1対1・1080p HD | 3.8Mbps | 3.0Mbps |
| グループ・720p HD | 2.6Mbps | 1.8Mbps |
| グループ・1080p HD | 3.8Mbps | 3.0Mbps |
| 画面共有のみ(映像サムネイルなし) | 50〜75kbps | |
| 音声のみ(VoIP) | 60〜80kbps | |
Zoom公式は、ギャラリー表示の受信には表示人数に応じて下りが増えること(25表示で2.0Mbps、49表示で4.0Mbps)も示しています。参加人数が多い会議で下りが圧迫される理由の一つです。
Microsoft Teams:「最小/推奨/ベスト」の3段階で表示
| 形態(Teams公式・kbps、上り/下り) | 最小 | 推奨 | ベストパフォーマンス |
|---|---|---|---|
| 音声・1対1/会議 | 10/10 | 58/58 | 76/76 |
| 映像・1対1 | 150/150 | 1,500/1,500 | 4,000/4,000 |
| 映像・会議 | 150/200 | 2,500/4,000 | 4,000/4,000 |
| 画面共有・会議 | 250/250 | 2,500/2,500 | 4,000/4,000 |
Microsoft公式は、この表がエンドポイント(端末)単位の目安であること、帯域が不足するとTeamsは映像より音声品質を優先することも明記しています。同じ人がPCとスマホの両方で参加すれば、端末は2つとして数える、という注意も公式の説明です。
Google Meet:個人・小規模向けは画質別の上限表示
| 形態(Google Meet公式・参加者あたり) | 送信(上り) | 受信(下り) |
|---|---|---|
| 1080p映像 | 最大3.6Mbps | 最大3.6Mbps |
| 720p映像 | 最大1.7Mbps | 最大1.7Mbps |
| 音声のみ | 100kbps | 100kbps |
Google公式の管理者向け資料では、大規模組織向けの平均値として映像で送信1Mbps/受信1.3Mbpsという別の集計も示されています。数字の前提(個人・小規模向けの上限か、組織平均か)が違うため、表の数字同士をそのまま横並びで比べないことが読み方のコツです。また、Meet専用ハードウェア向けの公式要件では、HD画質で送信3.2Mbps、遅延はGoogleのパブリックDNS(8.8.8.8)へのPingで50ms未満が示されていますが、これは専用ハードウェア向けの要件であり、一般のPC参加の条件と同一視しないでください。
なぜ「上り」が映像と画面共有に効くのか
動画視聴は受け取る一方の通信が中心ですが、会議では自分の映像・声・共有画面はすべて上りで送ります。発表者になって画面共有をしたり、カメラ映像を高画質で送ったりする場面ほど、上りの余裕が効きます。
公式数値でも、Zoomのグループ1080pでは上り3.8Mbpsが示され、Teamsの会議映像「推奨」でも上り2,500kbpsが示されています。一方で、画面共有そのものの帯域はZoom公式では50〜150kbps程度と小さく、「画面共有=常に重い」わけではありません。共有する内容の動きの多さや、映像と同時に出すかどうかで変わる、と分けて考えるのが正確です。一般論として、上りが細い回線や、上りが混雑する時間帯では、相手側で自分の映像が先に劣化しやすい点に注意してください。
速度が足りていても乱れる理由:遅延・ジッター・パケットロス
速度測定で十分なMbpsが出ているのに会議が不安定な場合、見るべきは遅延まわりです。Google公式のMeetトラブルシューティングでは、クライアントとGoogle間の往復遅延が100ms未満で映像品質が最も高く、300ms以上で品質が低下すると説明されています。
Microsoft公式のTeams通話品質の目安でも、ジッターは30ms未満が「良い」側のしきい値として示され、往復時間(RTT)やパケットロス(届かなかったデータの割合)も品質指標として扱われています。ジッターが大きいとパケットの到着間隔が乱れ、音声の途切れや映像のカクつきにつながります。つまり会議では、「速さの平均値」だけでなく「安定して届くか」が品質を決めます。
なお、これらのしきい値はサービスや測定方法ごとに定義が異なります。測定サイトのPing表示だけで異なるサービスの基準に当てはめて合否を断定しないでください。
Wi-Fiと有線LAN:安定性の違いはどこに出るか
一般に、有線LANはケーブルで直接つなぐため電波干渉の影響を受けにくく、遅延やジッターが安定しやすい接続方法です。Wi-Fiは設置の自由度が高い反面、ルーターからの距離、壁、他の電波との干渉、同じWi-Fiへの同時接続台数の影響を受けます。これは本記事の筆者による実測比較ではなく、接続方式の一般的な性質としての説明です。
公式情報でも、GoogleはMeetについて有線接続の利用を推奨する案内を出しており、帯域不足時の対処として有線Ethernetで改善するか試すことを挙げています。MicrosoftもTeams向けに、Wi-Fiでは5GHz帯の活用やアクセスポイント配置の最適化を案内しています。重要な会議で不安定さが続く場合は、まず有線で試して切り分ける、という順序が公式案内とも一致します。
Wi-Fiを使う場合の一般的な工夫としては、ルーターに近い場所で参加する、可能な範囲で5GHz帯を使う、会議中に同じWi-Fiで大容量ダウンロードを重ねない、といった点が挙げられます。ただし、これらで改善を保証するものではありません。
家族の同時利用は「合算」で考える
自宅の回線は家族で共有しています。会議中に家族が動画視聴やゲーム、別の会議をしていれば、その分の帯域も同じ回線から使われます。Google公式も、Meetの必要帯域は「参加者あたりの平均帯域 × 同時参加者のピーク数」で見積もる方法を示しています。これは組織向けの計算方法ですが、「同時利用は合算で考える」という考え方自体は家庭でも同じです。
| 同時利用の例(公式数値を使った単純な合算例) | 上りの目安 | 下りの目安 |
|---|---|---|
| 自分1人がZoomグループ720pに参加 | 2.6Mbps | 1.8Mbps |
| 家族もう1人が別室でTeams会議(映像・会議「推奨」)に同時参加 | +2.5Mbps | +4.0Mbps |
| 上記2人が同時の場合の単純合計 | 約5.1Mbps | 約5.8Mbps |
この表は公式推奨値を足しただけの計算例であり、実際の使用量や必要な契約速度を示すものではありません。動画視聴など会議以外の利用分はサービスごとに条件が異なるため、ここでは合算していません。同時利用が多い家庭ほど、1人分の推奨値ではなく合算と余裕で考える、という点が要点です。
会議前にできる確認方法チェックリスト
- ① 会議に使う端末・使う場所で速度測定する スマホではなく会議に使うPCで、参加する部屋・時間帯に測定し、上り・下り・Pingをセットで見る
- ② 複数回測る 1回だけの数字で判断せず、時間帯を変えて測り、ばらつきが大きいかを確認する
- ③ 公式推奨値と比べる 使うサービスの表(Zoom/Teams/Meet)と、自分の使い方(聞くだけ/映像あり/発表者)を照らす
- ④ 同時利用を確認する 会議時間に家族の動画視聴・ゲーム・アップロードが重ならないか把握する
- ⑤ 接続方法を切り分ける 不安定なら有線LANで試す、Wi-Fiならルーター近く・5GHz帯で試す
- ⑥ 代替手段を用意する カメラオフ、音声のみ参加、スマホの電話音声など、帯域を落とす手段を事前に知っておく
カメラオフの効果は公式数値でも裏付けられます。Zoomの音声のみは60〜80kbps、Teamsの音声「推奨」は58kbps、Google Meetの音声のみは100kbpsと、いずれも映像時の数Mbps規模と比べて大幅に小さくなります。Google公式のMeet案内でも、ネットワーク性能が不足する場合は映像をオフにして参加する方法が対処として挙げられています。「映像を止めれば会議を続けられる」という選択肢を知っておくことが、事前準備として実用的です。
よくある質問
Q. 速度測定で下りが速ければ会議は安定する?
下りだけでは判断できません。自分の映像を送る上り、遅延(Ping)、ジッターも関係します。下りが速くても上りが細い、または遅延のばらつきが大きい環境では、相手側で自分の映像や声が不安定になることがあります。
Q. 何Mbpsあれば絶対に大丈夫?
そのような断定はできません。各サービスの公式推奨帯域は画質・形態ごとの目安であり、同時利用人数、参加人数、時間帯、Wi-Fi環境などで実際の状態は変わります。本記事の公式数値を目安に、自分の使い方と同時利用を合算して考える方法をおすすめします。
Q. 発表者になるときだけ不安定になるのはなぜ?
発表時は自分の映像や画面を送る上りの負荷が増えるため、上り側がボトルネックになっている可能性があります。有線接続で試す、不要なアップロードを止める、解像度を落とす、といった切り分けが考えられます。原因を特定するものではないため、改善しない場合は利用環境全体の見直しが必要です。
Q. Wi-Fiから有線に変えれば必ず直る?
保証はできません。ただし有線は電波干渉の影響を受けにくく、Google公式もMeetで有線利用を推奨する案内を出しています。不安定さの原因がWi-Fi区間にあるかを切り分ける手段として有効です。
まとめ:推奨帯域・上り・安定性の3点で見る
オンライン会議の通信環境は、①使うサービスの公式推奨帯域(上り・下り)を自分の参加形態で読む、②発表や画面共有では上りを意識する、③速度だけでなくPing・ジッターとWi-Fi/有線の安定性を見る、という3点で整理できます。家族の同時利用がある場合は、1人分ではなく合算で考え、会議前には使う端末・場所・時間帯で測定しておくと判断材料になります。
数字はあくまで公式の目安です。「何Mbpsあれば絶対大丈夫」と決めつけず、自分の会議の形に当てはめて確認してみてください。
参照した公式資料・確認日
- Zoom:システム要件(帯域幅要件)(1対1/グループの推奨帯域、画面共有・音声の帯域)
- Microsoft:Prepare your organization’s network for Teams(音声/映像/画面共有の最小・推奨・ベスト、エンドポイント単位の考え方)
- Microsoft Support:Monitor call and meeting quality in Microsoft Teams(ジッター等の品質指標の目安)
- Google Workspace:Prepare your network for Meet meetings & live streams(参加者あたり帯域、同時参加者数による見積もり、帯域不足時の画質低下)
- Google:Google Meet hardware requirements(専用ハードウェア向けの帯域・遅延要件)
- Google Workspace:Troubleshoot Meet network, audio, & video issues(遅延100ms未満/300ms以上での品質への影響)
資料確認日:2026年10月24日。この記事は各サービスの公式情報に基づく通信環境の考え方の解説であり、特定回線・特定機器の実測レビューではありません。推奨帯域は各公式資料の記載であり、会議の安定を保証する数値ではありません。