テレビをリモコンで消したのに、レコーダーの時計は点いたまま。ルーターのランプもずっと光っている。こうした「使っていないのにコンセントにつながっているだけで消費する電力」が待機電力(待機時消費電力)です。減らしたい気持ちは分かりますが、片っ端からプラグを抜くと、録画予約が消えたり、ネットが止まったりと、かえって困ることもあります。
結論からいうと、進め方は条件で分かれます。長期間使わない機器はプラグを抜く、毎日使う機器は主電源オフや省エネ設定で減らす、抜き差しが面倒な場所はスイッチ付きタップでまとめて切る、そして録画・通信・凍結防止など「待機すること自体が仕事」の機器は抜かない。この記事は資源エネルギー庁・環境省・NITE(製品評価技術基盤機構)などの公的機関の案内に基づく解説で、特定製品の実機レビュー・実測ではありません。節約額は機器の組み合わせで変わるため、この記事では金額を断定しません。
条件別:まずやること・やらないこと
| あなたの状況 | 向いている対処 | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 季節家電など、しばらく使わない機器がある | プラグを抜く(使う季節の前に戻す) | 抜いたまま忘れて、必要な時期に設定が初期化されていることに気づかない |
| テレビまわりなど毎日使う機器が多い | 本体の主電源オフ、省エネモード・クイック起動オフなどの設定見直し | 毎日の抜き差しを習慣化しようとして続かなくなる |
| コンセントが家具の裏で手が届きにくい | 個別スイッチ付きタップで、手元でまとめて切る | タップを連結する、定格容量を超えてつなぐ |
| 録画予約・ネット・給湯器など止められない機器がある | その機器は通電したままにし、周辺の「止めてよい機器」だけを対象にする | タップのスイッチひとつで全部まとめて落とす |
| 旅行などで長く家を空ける | 止めてよい機器だけ抜く。冷蔵庫・ルーター等の扱いは個別に判断する | 帰宅後の再設定(時計・予約・Wi-Fi復旧)を想定せずに全部抜く |
待機電力の大きさの目安として、資源エネルギー庁のエネルギー白書は、同庁の平成24年度(2012年度)待機時消費電力調査を引用し、1世帯あたりの待機時消費電力量は年間228kWhで、家庭の全消費電力量4,432kWhの5.1%だったとしています。調査時点が古く、今の機器構成とは異なるため「今の自宅でも5.1%」という意味ではありません。1台ずつは小さくても、台数が多い家庭ほど積み上がる、という規模感の参考にしてください。
待機電力が発生する仕組み
資源エネルギー庁の定義では、待機時消費電力は「リモコンやマイコンなどを組み込んだ家電機器が、その機器を使っていないときでもコンセントにつながっていることで消費される電力」です。つまり、止まっているように見えても、機器の中で「次の仕事に備える部分」だけが起きている状態です。代表的な備え方は次の4つです。
- リモコンの受付:テレビやエアコンが、リモコンの信号をいつ来ても受けられるよう受信部を通電させている
- 時計・表示の維持:電子レンジやレコーダーなどの時刻表示、設定内容の保持に電力を使っている
- 予約・番組情報の取得:レコーダー等が録画予約の時刻を待ち、番組表などの情報を取得するために待機している
- ネットワーク待機:ルーターやネットワーク対応機器、スマート家電が、通信できる状態を保ち続けている
逆にいえば、待機中に維持する仕事がない機器(スイッチを入れないと何もしない単機能の機器など)は、待機電力がほとんど生じない場合もあります。「コンセントにつながっている=すべて待機電力を食っている」わけではない点が、対象を絞るうえでの出発点です。なお、機器ごとの待機時消費電力の数字そのものは、製品の取扱説明書や仕様欄に「待機時消費電力 ○W」のように記載されていることがあります。計測器での測り方やモニター表示の読み方は本記事の主題ではないため最小限にとどめ、ここでは「減らすための具体策」に絞ります。
待機電力が大きい傾向の機器の見つけ方
実測しなくても、次の観点で自宅を眺めると、優先順位はおおよそ付けられます。これは公式情報と機器の仕組みに基づく一般的な見方で、各家庭の実測値ではありません。
- ① 取扱説明書・仕様欄の「待機時消費電力」を確認する:数字で比べられる最も確実な方法。古い機器ほど大きく、新しい機器ほど小さく設計されている傾向があるため、年式の古い機器から確認すると効率的です
- ② 待機中の「仕事」が多い機器を疑う:リモコン受付+時計表示+録画予約+ネットワーク待機が重なる機器(テレビ・レコーダーまわり、ゲーム機やAV機器まわり)は、待機の役割が多い分、対象になりやすい場所です
- ③ 「すぐ使える」設定がオンになっていないか見る:テレビ等のクイック起動・高速起動のような設定は、起動を速くする代わりに待機時の消費が増える設計の場合があります。設定名や挙動は機種で異なるため、取扱説明書で確認してください
- ④ 季節で使わない機器・充電しっぱなしの周辺機器を洗い出す:オフシーズンの機器、使用頻度の低いオーディオ機器、充電が終わっても挿したままの充電器まわりは、「減らす」より先に「そもそも通電が要るか」を問いやすい場所です
- ⑤ 台数で考える:1台の待機電力は小さくても、同じ場所に何台も集中している場所(テレビ台の裏、デスクまわり)は、まとめて対処する価値が上がります
減らすための具体策:負担の小さい順に
1. 長期間使わない機器はプラグを抜く
資源エネルギー庁の節電Tipsでも、「テレビやパソコン、プリンターなどは、本体の主電源を切ったり、長時間使わない時はコンセントからプラグを抜いて待機電力をゼロにしましょう」と案内されています。環境省の家庭向け節電案内も、長時間使用しない場合はプラグを抜くこと、旅行など長期不在の時はテレビのプラグを抜くことを挙げています。毎日抜き差しするのではなく、「次の出番が遠い機器」から抜くのが続くやり方です。
2. 毎日使う機器は「主電源」と「設定」で減らす
リモコンで消すだけでは待機状態に入るだけの機器は、本体側の主電源を切ると待機電力を抑えられます。あわせて、省エネモード、画面の明るさの自動調整、一定時間で表示を消す設定、クイック起動のオフなど、機種ごとに用意された設定も見直しどころです。温水洗浄便座については、資源エネルギー庁のTipsが、温水のオフ機能やタイマー節約機能を使う方法(機能がない場合は使用しない時にプラグを抜く方法)を案内しています。設定の名称と効果は機種で異なるため、断定せず取扱説明書で確認してください。
3. 抜き差しが面倒な場所はスイッチ付きタップで切る
環境省の案内でも、毎回プラグを抜き差しする手間を省くためにスイッチ付きコンセントやスイッチ付きタップの利用が便利だとされています。プラグを挿したまま、タップ側のスイッチで通電を止めれば、その機器にとってはプラグを抜いたのと同じ「非通電」の状態にできます。ポイントは、機器ごとにオン・オフできる個別スイッチ付きを選び、「止めてよい機器」だけをそのタップに集めることです。止めてはいけない機器(次章)と同じタップに混ぜないことが、安全面より前に運用面での大前提になります。特定の製品のおすすめはしません。購入時は、差し込み口の数やコード長よりも先に、後述する定格と安全仕様を確認してください(価格は変動するため、本記事では扱いません)。
4. 充電まわりは「終わったら外す」を基本にする
スマホやゲーム機の充電器は、充電が終わった後も挿したままになりがちな場所です。機器をつないでいない充電器自体の消費はごく小さい場合が多いものの、「挿しっぱなしの本数」が増えるほど管理は雑になります。充電が終わったらケーブルを外す、充電場所を1か所に決めてスイッチ付きタップでまとめる、といった運用に寄せると無理がありません。ただし、充電中の機器をタップのスイッチで不用意に切ると充電が途中で止まるだけなので、家族と「切ってよいタップ/切らないタップ」を共有しておくと混乱を防げます。
スイッチ付きタップの安全な使い方
タップは待機電力対策の道具であると同時に、使い方を誤ると発熱・発火の原因になる配線器具でもあります。次の注意点は、NITEと東京消防庁の案内に基づきます。
- 定格容量を超えない:NITEは「配線器具の接続可能な消費電力を確認し、超えないように注意してください」としています。東京消防庁も、テーブルタップの決められた容量以上に接続してコンセント部分が発熱し火災に至った事例を示し、「テーブルタップは、決められた容量内で使用しましょう」と呼びかけています。タップ本体の表示(合計○Wまで)と、つなぐ機器の消費電力の合計を必ず照合してください
- タップを連結しない(たこ足の重ね掛けをしない):NITEは、テーブルタップなどを連結して差し込み口を増やすたこ足配線は消費電力が大きくなり、電源コードやプラグが異常発熱するおそれがあるとして、タップの連結やマルチタップの取り付けをしないよう案内しています
- コードを束ねたまま使わない・家具の下敷きにしない:東京消防庁は、電気コードを束ねて使用しないこと、折れ曲がりや家具等の下敷き・挟まれに注意することを挙げています
- ほこりをためない:コンセントやプラグまわりのほこりは、湿気と結びついてトラッキング現象(漏電・発火)の原因になります。差しっぱなしの場所ほど、定期的にプラグを抜いてほこりを取り除く点検を兼ねてください
- 抜くときはプラグ本体を持つ:東京消防庁の案内のとおり、コードを引っ張らず、プラグ本体を持って抜くのが基本です
- 消費電力の大きい機器はタップ経由にしない判断も:暖房器具や調理家電のように使用時の消費電力が大きい機器は、待機電力対策の対象としてタップに集めるのではなく、各機器の取扱説明書の指示(壁のコンセントへ直接つなぐ指定など)に従ってください
焦げた跡、変色、異常な熱さ、プラグの緩みといった異常があるタップやコードは、節電以前の問題として使用を止め、交換を検討してください。
抜いてはいけない・抜くと不便になる機器
待機電力対策で一番の失敗は、「減らすこと」自体が目的化して、待機が必要な機器まで止めてしまうことです。次に当てはまる機器は、原則として通電したままにするか、止める前に取扱説明書と家族への影響を確認してください。
| 機器 | 抜くと起きること | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 録画予約のあるレコーダー・テレビ | 予約録画が実行されない、番組表や時刻情報の取得が止まる場合がある | レコーダー自体は通電し、周辺の止めてよい機器(使っていないゲーム機等)だけを対象にする。クイック起動等の設定見直しは予約への影響を確認してから |
| ルーター・ONU(光回線の終端装置)等 | 家中のネットとWi-Fiが止まる。ネット経由の固定電話、スマート家電・見守りカメラ等の遠隔操作も止まる場合がある | 原則抜かない。在宅ワークや遠隔見守りがある家庭では、長期不在時も含めて通電を維持する判断が無難 |
| 給湯器(ガス給湯器等)とそのリモコン | 寒冷時に凍結予防が働かなくなる場合がある。ガス事業者の凍結予防案内では、凍結予防ヒーターや循環ポンプが自動で作動するため「電源プラグを抜かないでください」と明記されている | リモコンの運転スイッチを切る操作と、プラグを抜くことは分けて考える。長期不在時の水抜き等の扱いは、取扱説明書やガス事業者の案内に従う |
| 冷蔵庫 | そもそも待機ではなく24時間運転する機器であり、止めれば食材が傷む | 待機電力対策の対象から外す。見直すなら温度設定や詰め込みすぎなど「運転の仕方」の側で考える |
| 時計・設定がリセットされる機器 | 時刻合わせや各種設定をやり直す手間が発生し、機種によっては設定が初期化される | 抜くのは長期不在など「再設定の手間を受け入れられる時」に限定し、日常は主電源オフやタップのスイッチまでに留める |
| 常時通信・常時監視が前提の機器(見守りカメラ、スマートロックのハブ等) | 通知や遠隔確認など、その機器を置いた目的自体が止まる | 対象から外す。消費が気になる場合も、まず取扱説明書の待機時消費電力を確認してから判断する |
このほか、医療機器など生活・安全に直結する機器は、節電目的で電源を切る対象にしないでください。判断に迷う機器は「抜かない」が正解側です。待機電力は1台あたり小さいことが多いため、無理をして困る機器まで止める必要はありません。
旅行など長期不在時の扱い
長期不在時は、日常よりも「抜く」判断がしやすくなる一方、帰宅後の復旧と、止めてはいけない機器の見落としが増える時期でもあります。環境省の案内が「旅行など、長期不在の時はプラグを抜くようにしましょう」としているのはテレビについての記述ですが、考え方はほかの機器にも応用できます。出発前に次を確認してください。
- 抜いてよいもの:テレビ(録画予約がない場合)、使っていないAV機器・ゲーム機、充電器、季節外の機器など。再設定の手間が小さいものから
- 抜かないもの:冷蔵庫(食材を空にし、取扱説明書の長期停止手順に従う場合を除く)、ルーター等(遠隔見守りやスマート家電を使う場合)、給湯器(特に寒冷期。凍結予防のため通電が必要な場合がある)
- 録画の予定を確認する:不在中に録りたい番組があるなら、レコーダーは通電したままにします。「不在だから全部抜く」と予約が衝突しやすい点に注意してください
- 帰宅後の復旧をメモしておく:抜いたプラグの場所、時刻合わせや予約の再確認が必要な機器を、出発前にスマホへメモしておくと戻し忘れを防げます
- タップのスイッチで済ませる範囲を決める:個別スイッチ付きタップなら、不在中だけ切る口と、常時通電の口を分けておけます。一括スイッチで全部落とす運用は、止めてはいけない機器が混ざっていないか再確認してからにしてください
始める前のチェックリスト
- ① 場所を決める 家全体ではなく、テレビ台の裏やデスクまわりなど、機器が集中する1か所から始める
- ② 仕様を確認する 取扱説明書・仕様欄の「待機時消費電力」と、待機中の役割(予約・通信・表示)を機器ごとに見る
- ③ 仕分ける 「抜いてよい」「設定で減らす」「抜いてはいけない」の3つに分け、家族と共有する
- ④ 方法を選ぶ 長期間使わないものは抜く、毎日使うものは主電源・設定、届きにくい場所は個別スイッチ付きタップ
- ⑤ タップの安全を確認する 定格容量の合計照合、連結しない、束ねない、ほこりを取る、異常のあるタップは使わない
- ⑥ 止めてはいけない機器を混ぜない レコーダー(予約時)、ルーター、給湯器、冷蔵庫、常時通信機器は対象外を維持する
よくある質問
Q. すべての家電のプラグを毎回抜くのが正解?
いいえ。公的機関の案内も「長時間使わない時は抜く」「主電源を切る」といった使い分けを示しています。録画予約・通信・凍結防止など待機が必要な機器まで止めると不便や不具合につながるため、機器を選んで対処するのが前提です。節約額も機器構成で変わるため、「全抜きでいくら得」とは言えません。
Q. スイッチ付きタップで切るのと、プラグを抜くのは同じ?
その機器への通電を止めるという点では同じ考え方です。ただし、タップ自体の扱いには定格容量・連結禁止・ほこり対策といった安全上の注意が伴います。また、タップのスイッチを切れば、その口につないだ機器はすべて非通電になるため、止めてはいけない機器を同じタップに混ぜないことが重要です。
Q. 最近の家電は待機電力が小さいと聞く。対策は不要?
機器の省エネ化で1台あたりの待機時消費電力は小さくなっている傾向があり、取扱説明書の仕様値が小さい機器については、無理に対策する優先度は下がります。一方で、機器の台数自体が増えている家庭では、古い機器や待機の役割が多い機器、季節で使わない機器に絞れば、対策する意味は残ります。まずは仕様値の確認から始めてください。
まとめ:抜く・設定する・抜かない、の3仕分けが先
待機電力を減らすコツは、がんばって全部抜くことではなく、機器を「抜いてよい」「設定で減らす」「抜いてはいけない」に仕分けることです。長期間使わない機器は抜く、毎日使う機器は主電源と省エネ設定、届きにくい場所は個別スイッチ付きタップを定格内で安全に使う。録画・通信・凍結防止が仕事の機器は、あわてて止めない。この順番なら、暮らしの便利さを落とさずに続けられます。
まずはテレビ台の裏かデスクまわり、どちらか1か所の仕分けから始めてみてください。
参照した公式資料・確認日
- 資源エネルギー庁:エネルギー白書2015 第2部 第1章 第2節(待機時消費電力の定義、平成24年度調査に基づく228kWh/4,432kWh・5.1%の引用)
- 資源エネルギー庁:どうやったら節電できる?明日からすぐに役立つ節電・省エネのヒント(主電源オフ・長期間使わない時はプラグを抜く、温水洗浄便座のタイマー節約機能等)
- 環境省:家庭でできる節電アクション「こまめにスイッチオフ!」(長時間使用しない場合はプラグを抜く、長期不在時の扱い、スイッチ付きタップの利用)
- NITE(製品評価技術基盤機構):たこ足配線の危険性(タップの連結禁止、接続可能な消費電力を超えないこと)
- 東京消防庁(府中消防署):電気製品の火災予防のお知らせ(容量内での使用、コードを束ねない、ほこり対策、プラグ本体を持って抜く)
- 洲本ガス:凍結による給湯機器の破損(故障)予防のお願い(凍結予防のため給湯機器の電源プラグを抜かないこと)
資料確認日:2026年10月24日。待機時消費電力の割合(5.1%)は資源エネルギー庁の平成24年度調査を同庁エネルギー白書が引用した値で、調査時点の数値です。現在の各家庭の割合や節約額を保証するものではありません。この記事は公的機関等の公式情報に基づく解説であり、特定製品の実機レビュー・待機電力の実測ではありません。個別機器の扱いは各製品の取扱説明書が優先します。