モバイルバッテリーのパッケージには「20,000mAh」のような大きな数字が目立つように書かれていますが、飛行機に持ち込めるかどうかを判断する単位はmAhではありません。航空のルールで使われるのはWh(ワット時)で、本体の裏面などに小さく印字されていることが多い表示です。出発直前に慌てないために、搭乗前にWhを確認する手順を整理します。
結論からいうと、確認は①Whが100以下か、100を超えるか、160を超えるか ②預け荷物ではなく機内持ち込みに入れる ③個数や機内での扱いを含め、利用する航空会社の公式案内でも確かめるの3点です。100Wh以下なら機内持ち込みが原則ですが、日本では2026年4月24日から個数などのルールが変わっています。100Whを超えるモバイルバッテリーの扱いは基準や航空会社によって分かれるため、この記事では公式情報と一般論を分けて説明します。
結論の早見表:Whごとに持ち込みの考え方が変わる
| ワット時定格量(Wh) | 機内持ち込み | 預け荷物 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 100Wh以下 | 原則可 | 不可 | 一般的な5,000〜20,000mAh級は、計算上この範囲に入ることが多い。ただし個数制限は航空会社・国で異なる(日本では下記のとおり1人2個まで) |
| 100Whを超え160Wh以下 | 扱いが分かれるため要事前確認 | 不可 | 予備電池一般には航空会社の承認で持ち込める枠組みがある一方、モバイルバッテリー単体は不可とする案内もある。日本の現行基準では160Wh以下・2個までの枠内。最終判断は利用する航空会社に確認 |
| 160Whを超える | 不可 | 不可 | 旅客の手荷物としては持ち込めない。IATAの案内では貨物としての取り扱いになる区分 |
| Whが不明・表示が読めない | 持ち込めない場合がある | 不可 | ANAは「Whが不明な場合はお持ち込みいただけません」と明記。IATAも、係員がWhを確認できなければ航空会社が搭載を認めない場合があるとしている |
この表は基準の考え方を整理したもので、実際の運用は航空会社や路線、時期で変わります。とくに100Whを超える製品と個数については、利用する航空会社の公式案内で確認してください。
1. Whとは? mAh・Wとの違い
Wh(ワット時)は、電池にどれだけのエネルギーが蓄えられているかを示す量です。似た表示と混同しやすいので、3つを分けて覚えると判断を誤りません。
| 表示 | 意味 | 飛行機の判断で使うか |
|---|---|---|
| Wh(ワット時) | 蓄えられるエネルギーの量 | 使う。持ち込み可否はこの数字で判断される |
| mAh(ミリアンペア時) | 電気の量。電圧が違う製品同士はmAhだけでは比較できない | そのままでは使わない。電圧と組み合わせてWhに換算する |
| W(ワット) | 充電の速さ・出力の目安 | 使わない。「30W対応」などは充電速度の話で、容量のWhとは別 |
「W数が大きい=容量が大きい」ではありません。出力のWについては、充電器やケーブルの選び方と合わせてUSB-Cケーブルの充電・転送・映像の違いと選び方も参考にしてください。
2. 自分のバッテリーは何Wh? 確認手順と換算式
確認の優先順位は①本体のWh表示 ②mAhと電圧からの計算 ③メーカー公式の仕様表・取扱説明書です。本体裏面や側面の小さな印字に「Wh」または「Watt-hour rating」と書かれていれば、その数字が判定の基準になります。
Wh表示がなく、定格容量(mAh)と定格電圧(V)だけが分かる場合は、次の式で計算できます。IATAのガイダンスでも、Whは「定格容量(Ah)×公称電圧(V)」で求めると説明されています。
Wh = 定格容量(mAh)× 定格電圧(V)÷ 1,000
| 定格容量の例 | 計算(電圧3.7Vの場合) | Whの計算結果 |
|---|---|---|
| 5,000mAh | 5,000 × 3.7 ÷ 1,000 | 18.5Wh |
| 10,000mAh | 10,000 × 3.7 ÷ 1,000 | 37Wh |
| 20,000mAh | 20,000 × 3.7 ÷ 1,000 | 74Wh |
| 27,000mAh | 27,000 × 3.7 ÷ 1,000 | 99.9Wh |
| 30,000mAh | 30,000 × 3.7 ÷ 1,000 | 111Wh |
ただし、この表は電圧3.7Vと仮定した計算例です。実際の製品の電圧は3.6V、3.85Vなど製品ごとに異なります。とくに27,000mAh級のような100Whの境目付近の製品は、推定で判断せず、本体のWh表示かメーカー公式仕様で確認してください。なお、換算で出るWhは電池自体の容量で、変換ロスのため実際にスマホへ入る量はそれより少なくなります。容量の数字と実際に充電できる量は分けて考えましょう。
3. 持ち込みルールの考え方:国際的な枠組みと日本の現行ルール
まず国際的な案内の考え方です。IATA(国際航空運送協会)の旅客向け案内では、リチウム電池について100Wh以下は機内持ち込みが一般的、100〜160Whは航空会社の承認により持ち込める場合がある、160Whを超えるものは旅客機への持ち込みが通常認められないという整理がされています。あわせて、航空会社や各国の規則で内容が異なるため、事前に航空会社へ確認するよう求めています。
ただし、モバイルバッテリー単体については、より厳しい案内が出ています。IATAの2026年版ガイダンス文書では、モバイルバッテリーは「100Wh以下を最大2個まで」とされ、一覧表でも100Whを超えるモバイルバッテリーは搭載不可(Forbidden)と、機器用の予備電池とは区別して記載されています。「100〜160Whは承認を取ればよい」という一般論を、そのままモバイルバッテリーに当てはめないでください。
日本の現行ルールは、国土交通省が2026年4月14日に発表し、同年4月24日から適用された内容が基準になります。従来からの預け入れ荷物への収納禁止に加えて、追加されたのは次の3点です。
- 機内持ち込みのモバイルバッテリーは2個(160Wh以下に限る)まで
- 機内においてモバイルバッテリーへの充電をしないこと
- 機内においてモバイルバッテリーから他の電子機器への充電をしないこと
JAL・ANAも同じ内容を公式案内で示しています。以前の「100Wh以下なら個数制限なし」といった覚え方のままでは、現在の日本のルールと合わない場合があります。またJALは、IATAの規則変更の見通しにより2027年1月から上限が100Whに下がる可能性があることも案内しています。年末年始をまたぐ旅行などでは、行きと帰りで案内が変わる可能性も含め、搭乗直前に再確認してください。
4. 預け荷物には入れない:機内持ち込みのみ可が原則
モバイルバッテリーは、容量にかかわらず預け荷物(受託手荷物)には入れられません。国土交通省・IATA・各航空会社で共通する原則です。IATAはその理由を、貨物室で電池が過熱・発火した場合に乗務員がすぐ対応できないためとし、客室内で管理できるよう手荷物に入れるよう案内しています。
荷造りの段階で、モバイルバッテリーはスーツケースではなく機内持ち込みのバッグへ分けておきましょう。あわせて、ショート防止のため端子をテープで保護するか、ケースや袋に1個ずつ入れる措置がJAL・IATAの案内で求められています。JALは座席上の収納棚への収納を控えるよう案内しており、日本のルールでは機内でモバイルバッテリー自体を充電したり、モバイルバッテリーからスマホ等を充電したりしないことも決められています。「持ち込める=機内で使える」ではない点に注意してください。膨らみや破損のあるバッテリーについては、IATAが旅行に持ち込まないよう案内しています。
5. Wh表示がない・読めない場合はどうする?
表示がない場合の扱いは、思っているより厳格です。ANAは国内線の案内で「ワット時定格量(Wh)が不明な場合には、160Whを超える場合と同様に、お持ち込みいただけません」と明記しています。IATAのガイダンスでも、本体や付属資料で係員がWhを確認できない場合、航空会社が搭載を認めない場合があるとされています。
対応手順としては、まず型番をもとにメーカー公式の仕様ページや取扱説明書でWh・定格容量・定格電圧を確認し、その情報を控えておくことが挙げられます。ただし、計算や手元の控えがあっても、本体の表示が消えていて現場で確認できない製品は、持ち込みを断られる可能性があります。公式情報でもWhを確認できない製品は、無理に持ち込もうとせず、旅行には持っていかない判断をしてください。最終的な可否は利用する航空会社と空港での確認によります。
搭乗前に確認するチェックリスト
- ① Whを確認 本体のWh表示が最優先。なければ定格容量(mAh)×定格電圧(V)÷1,000で計算し、境目付近は公式仕様でも照合する
- ② 個数を数える 日本では機内持ち込みは160Wh以下を1人2個まで(2026年4月24日適用のルール)。海外の航空会社は別条件の場合がある
- ③ 入れる場所を分ける 預け荷物のスーツケースには入れず、機内持ち込みのバッグへ
- ④ 端子を保護 テープで覆うか、ケース・袋に1個ずつ収納してショートを防ぐ
- ⑤ 状態を見る 膨らみ・破損・表示の消失がないか確認する
- ⑥ 航空会社の公式案内を確認 利用する航空会社の手荷物ページで、容量・個数・機内での扱いの最新案内を確認する
よくある質問
Q. 20,000mAhのモバイルバッテリーは持ち込める?
電圧3.7Vの製品なら計算上は約74Whとなり、100Wh以下の範囲に入ります。ただし判定に使われるのは計算の推定値ではなく、その製品の定格にもとづくWhです。本体の表示と、利用する航空会社の公式案内(個数制限を含む)で確認してください。
Q. 100Whを超えたら、航空会社の承認を取れば必ず持ち込める?
いいえ、モバイルバッテリーについては「必ず持ち込める」とは言えません。予備電池一般には航空会社の承認で持ち込める枠組みがありますが、IATAの2026年版ガイダンスでは100Whを超えるモバイルバッテリーを搭載不可と区別しており、日本の現行基準では160Wh以下・2個までの枠で案内されています。扱いは航空会社や時期で異なるため、100Whを超える製品は事前に利用する航空会社へ確認してください。
Q. スマホやノートPCに内蔵されたバッテリーも同じルール?
この記事で扱っているのは、単体で持ち歩くモバイルバッテリーです。機器に内蔵・装着された電池や、カメラ等の機器用予備電池は、航空会社の案内でもモバイルバッテリーとは別の項目で条件が示されています。あわせて持っていく場合は、各航空会社の手荷物ページで該当項目を確認してください。
まとめ:まずWhを見て、最後は航空会社の公式案内で確認
モバイルバッテリーを飛行機に持ち込む前の確認は、mAhの大きさではなくWhで判断することが出発点です。本体のWh表示を確認し、なければ「mAh×V÷1,000」で計算する。預け荷物には入れず機内持ち込みに分け、個数と端子保護も済ませる。100Wh以下は原則として機内持ち込みの範囲ですが、100Whを超える製品の扱いと個数制限は基準・航空会社・時期で変わるため、利用する航空会社の公式案内で確認してから荷造りを終えてください。
参照した公式資料・確認日
- 国土交通省:モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて(2026年4月14日発表・4月24日適用)(預け入れ禁止、2個・160Wh以下、機内での充電・給電の制限)
- IATA:Passengers Travelling with Lithium Batteries – Guidance Document(2026年版)(Whの計算方法、モバイルバッテリーと予備電池の区分、一覧表)
- IATA:Safe Travel with Lithium Batteries(100Wh以下/100〜160Wh/160Wh超の考え方、預け荷物不可の理由)
- JAL:Domestic Flights Restricted items (Baggage)(2個・160Wh以下、短絡防止、2027年1月から100Whへ下がる可能性の案内)
- ANA:機内持ち込みに注意が必要な手荷物について(国内線)(Whが不明な場合は持ち込み不可)
資料確認日:2026年10月24日。この記事は公式情報にもとづくルールの解説であり、特定製品の実機レビューや、実際に持ち込んだ結果の報告ではありません。ルールは改定される場合があるため、搭乗前に利用する航空会社の公式案内で最新の内容を再確認してください。