ワイヤレス充電器の売り場で「Qi」「Qi2」「MagSafe」という表示が並び、どれが自分のスマホに合うのか分かりにくくなっています。とくに紛らわしいのが、磁石でくっつくことと、規格に認証されていることは別という点です。
結論からいうと、確認の順番で答えは分かれます。iPhone 12系以降のMagSafe対応モデルならQi2充電器が本命、Androidは機種ごとに「本体に磁石があるか」「Qi2 Readyでケース併用が条件か」が分かれる、充電器側は「Qi2対応」と書かれているだけでは足りず認証の確認が要る、という3点です。この記事では有線充電との比較やケース選びには踏み込まず、規格団体WPCとAppleの公式情報を基に、Qi2の基礎と対応の確認項目に絞って整理します。特定製品のレビュー・実測ではありません。ワイヤレス対応のモバイルバッテリーの実機レビューは、別記事「MATECH MagOn Air 3000のレビュー」で扱っています。
- 1 まず全体像:Qi/Qi2/Qi2 25W/MagSafeの違い
- 2 1. Qi2とは:WPCの規格で、磁石で位置を合わせる
- 3 2. 従来のQiと何が違うか:違いの本質は「位置ずれ」と「上限の読み方」
- 4 3. 対応スマホの確認方法(iPhone):MagSafe対応モデルが土台、例外に注意
- 5 4. 対応スマホの確認方法(Android):「本体の磁石」と「Qi2 Ready」を分ける
- 6 5. 充電器側の確認:Qi2ロゴと認証データベースで確かめる
- 7 6. MagSafeとの関係:考え方は共通、名前と認証は別
- 8 買う前に確認するチェックリスト
- 9 よくある質問
- 10 まとめ:端末・充電器・アダプターを別々に確かめる
- 11 参照した公式資料・確認日
まず全体像:Qi/Qi2/Qi2 25W/MagSafeの違い
| 名前 | 定めている主体 | 磁石の位置合わせ | 出力の目安(規格・公式仕様上の上限) |
|---|---|---|---|
| Qi(従来) | WPCの業界規格 | なし。置く位置は自分で合わせる | 端末・充電器の対応による。iPhoneではQi充電器で7.5W扱いが一般的 |
| Qi2 | WPCの業界規格(Qi v2.0) | あり(Magnetic Power Profile=MPP) | 最大15W |
| Qi2 25W | WPCの業界規格(Qi v2.2.1) | あり(MPP) | 最大25W。対応スマホ・対応充電器・十分なアダプターがそろった場合 |
| MagSafe | Apple(iPhone向けの仕組みの名前) | あり | 機種で異なる。iPhone 15以前は最大15W、新しい世代では最大25W級(機種別の上限あり) |
表のW数は規格と公式仕様上の上限です。実際の充電電力は、スマホ・充電器・給電用アダプターのうち一番小さい対応値や、使用条件で決まります。充電器の箱に書かれた数字だけでは決まりません。
1. Qi2とは:WPCの規格で、磁石で位置を合わせる
Qi2は、ワイヤレス充電の業界団体であるWireless Power Consortium(WPC)が策定したQi規格の新しい世代です。WPCの公式説明では、Qiは2010年に始まり、Qi v2.0が2023年に登場しました。Qi2と呼ばれるのは、このQi v2.0のうち磁石を使う方式です。
中心になる仕組みがMagnetic Power Profile(MPP)です。スマホと充電器の両方にある磁石で吸着し、充電コイル同士の位置を毎回同じ場所に合わせます。WPCはこの磁気アタッチメントにより、位置がぴったり合うことでエネルギー効率が改善し、充電が速く、使い勝手も良くなると説明しています。Qi2の出力は15Wが基準です。
さらに新しい世代として、WPCは2025年7月にQi v2.2.1を「Qi2 25W」として発表しました。出力はQi2の15Wから約70%増えた25W級で、WPCは対応スマホを約30分で50%まで充電できると案内しています。ただしこれは対応するスマホ・充電器・アダプターがそろった場合の目安で、すべての組み合わせで25Wになるわけではありません。
2. 従来のQiと何が違うか:違いの本質は「位置ずれ」と「上限の読み方」
従来のQiには磁石の位置合わせがありません。パッドの上に置く位置がずれると、充電が遅くなったり、止まったりすることがあります。就寝前に置いたつもりが、朝までにあまり増えていなかった、という失敗が起きやすいのはこのためです。Qi2/MagSafeのような磁石式では、吸着した時点で位置が決まるため、この種の置きずれを防ぎやすくなります。
出力の違いは「一律に何倍速い」とは言い切れません。従来Qiでも端末と充電器の組み合わせで大きな出力に対応する例はあります。一方でiPhoneでは、従来のQi充電器では7.5Wが目安とされてきました。Qi2では、対応iPhoneで最大15W、Qi2 25W対応の組み合わせでは最大25W級が公式仕様上の上限になります。比べるべきは方式の名前ではなく、「自分の端末の上限」と「充電器の認証区分」の組み合わせです。
なお後方互換もあります。WPCは、Qi認証製品同士は旧世代を含めて一緒に使えることを認証の前提としています。Qi2充電器でも、古いQi対応スマホはそのスマホ自身の上限で充電されます。「新しい充電器を買ったら手持ちの端末が使えなくなる」わけではありません。
3. 対応スマホの確認方法(iPhone):MagSafe対応モデルが土台、例外に注意
iPhone側の起点は、Apple公式のMagSafe対応モデル一覧です。Appleのサポートページでは、MagSafe充電器で効率よく充電できるモデルとしてiPhone 12系以降の各世代が挙げられています。磁石の土台を持つこれらのモデルが、Qi2充電器でも磁石で吸着して最大15W(Qi2)の対象になります。自分の型番は「設定」アプリやApple公式の技術仕様で確認できます。
例外も公式情報で区別されています。代表例がiPhone 16eで、Appleはこのモデルを「MagSafe非対応のQi対応機」として、MagSafe対応モデルとは分けて案内しています。世代が新しくても磁石を持たないモデルでは、Qi2充電器に吸着せず、上限もQi側の扱いになります。「iPhone 12以降は全部同じ」とまとめず、e系・SE系を含むモデルは個別に公式仕様を確認してください。
上限W数も世代で分かれます。Appleの案内では、iPhone 15以前はMagSafeで最大15W、iPhone 12 miniとiPhone 13 miniは最大12Wです。Qi2 25Wについては、WPCの案内でiPhone 17系が標準対応、iPhone 16系はiOS 26で対応するとされています。MagSafe充電器でのピーク値(iPhone 16と16 Proで22.5W、iPhone Airで20Wなど)とは別の認証区分なので、「MagSafeで25W級」と「Qi2 25W認証」は同じ数字でも別々に確認するのが正確です。充電が想定より遅いときの切り分けは、別記事「スマホの充電が遅いときの確認項目」でも整理しています。
4. 対応スマホの確認方法(Android):「本体の磁石」と「Qi2 Ready」を分ける
Androidはメーカー・機種ごとに実装が分かれるため、iPhoneのような一律の線引きはできません。確認は次の順番が確実です。まずメーカー公式の仕様ページで「Qi2」「Magnetic Power Profile(MPP)」の表記を探す。次に、その対応が「本体に磁石を内蔵」なのか「対応ケースを付けた場合」なのかを読み分ける。最後に、後述するWPCの認証データベースでも型番を確認します。
読み分けで重要なのが「Qi2 Ready」です。これは本体に磁石を持たない機種が、承認された磁石付きケースと組み合わせることでQi2の使い勝手を得る仕組みです。WPCの案内では、Galaxy S25系・S26系はQi2 Readyケースが必要とされています。つまり「Qi2 Ready対応」と書かれたスマホでも、ケースなしでは磁石で吸着しません。
反対に、本体に磁石を内蔵する例もあります。WPCの案内では、Pixel 10 Pro XLが磁石内蔵でQi2 25Wに対応し、その他のPixel 10系は15Wとされています。同じシリーズ内でも上限が分かれるため、シリーズ名ではなく型番単位で公式仕様を確認してください。「ワイヤレス充電対応」とだけ書かれ、Qi2やMPPの記載がない機種は、従来Qi対応と判断するのが安全です。
5. 充電器側の確認:Qi2ロゴと認証データベースで確かめる
充電器側の第一の目印はQi2ロゴです。WPCは、厳格な安全性・相互運用性の試験に合格したQi認証製品だけがQi/Qi2ロゴを表示できると定めています。反対に、WPC自身が注意を促しているのが「Qi compatible(Qi互換)」「Qi compliant」といった表現で、こうした言い回しは正規の認証試験を受けていない可能性を示すとされています。Qi2でも同様で、WPCは「Qi2 compatible」「Qi2 enabled」はQi2認証ではないと明言しています。「Qi2対応」と書かれた製品でも、この一線を確認してください。
確実な確認先が、WPCのQi認証製品データベースです。WPCはこれを「本当にQi2認証かどうかを消費者が確かめる最良の方法」と位置づけています。探し方のコツは、箱に書かれた商品名ではなく、パッケージや仕様書にあるメーカー型番(部品番号)で検索することです。データベースでは認証の版とプロファイルも読み分けられます。Qi2 25Wなら「Version 2.2.1/Power Profile MPP25/25.0」、Qi2(15W)なら「2.0.0/MPP/15.0」が目安です。15W品と25W品は別の認証区分なので、購入前にここを押さえると「25Wだと思って買ったのに15W品だった」を防げます。
給電用アダプターも忘れがちな確認項目です。WPCの案内では、Qi2 25Wの充電器で上限を出すには30〜40W以上のアダプターが必要とされています。Appleの案内でも、25W級のMagSafe充電には30W以上のアダプター、15W級では20W以上のアダプターが条件です。アダプターが同梱されない製品では、充電器本体とアダプターを合わせた一式で考えてください。価格は時期や販売店で変わるため、この記事では金額を断定せず、購入時に一式の合計を販売ページで確認することをおすすめします。ケーブル側の対応電力や規格の見分け方は、総論記事「USB-Cケーブルは全部同じ?充電・転送・映像出力の違いと選び方」で整理しています。
6. MagSafeとの関係:考え方は共通、名前と認証は別
MagSafeはAppleがiPhone向けに使う磁石式充電・アクセサリーの仕組みの名前で、Qi2はWPCの業界規格の名前です。Qi2の磁石による位置合わせ(MPP)は、MagSafeの考え方を土台に標準化されたもので、対応するiPhoneではMagSafe充電器でもQi2認証充電器でも、磁石で吸着して充電できます。ここが両者の互換性が感じられる部分です。
ただし、認証の発行元とロゴは別です。MagSafeとしての上限(世代によって15Wや25W級)と、Qi2/Qi2 25Wとしての上限は、それぞれの認証と公式仕様で確認します。また「MagSafe対応ケース」はケース側に磁石が入っているという表示で、充電器のQi2認証とは別物です。スマホ本体・ケース・充電器・アダプターの4点それぞれで、対応する規格の名前を確認するのが迷わない方法です。
買う前に確認するチェックリスト
- ① スマホ側の土台 自分の型番が公式仕様でQi2/MagSafeのどちらに対応するか確認したか。iPhoneは16e等の磁石を持たない例外、Androidは型番単位で確認する
- ② 磁石の場所 Androidでは「本体に磁石内蔵」か「Qi2 Readyで対応ケースが条件」かを読み分けたか
- ③ 上限W数の組み合わせ スマホの上限・充電器の認証区分(15Wか25Wか)・アダプターの出力のうち、一番小さいものが上限になると理解したか
- ④ ロゴと表現 Qi2ロゴがあるか。「Qi2 compatible」「Qi2 enabled」だけの製品は認証品と扱わない
- ⑤ データベース照合 WPCのQi認証製品データベースで、メーカー型番・版(2.0.0/2.2.1)・プロファイル(MPP/MPP25)を照合したか
- ⑥ ケースとの関係 使っているケースが磁石対応か、カード収納等が充電の妨げにならないか。ケースの表示と充電器の認証は別々に確認する
よくある質問
Q. Qi2充電器なら、どのスマホでも15Wで充電できる?
いいえ。15WはQi2側の上限です。スマホがQi2(MPP)に対応していることが前提で、従来Qiのみ対応のスマホはそのスマホ自身の上限で充電されます。AndroidのQi2 Ready機種では、対応ケースを付けた場合に限る点にも注意してください。
Q. 「Qi2対応」「MagSafe対応」と書かれた安い充電器は認証品?
表示だけでは判断できません。WPCは「Qi2 compatible」「Qi2 enabled」といった表現はQi2認証ではないと明言しています。Qi2ロゴの有無に加えて、WPCのQi認証製品データベースにメーカー型番で載っているかを確かめるのが確実です。
Q. Qi2とQi2 25Wはどう見分ける?
パッケージの「Qi2 25W」ロゴと、データベースの記録で見分けます。Qi2 25WはVersion 2.2.1/MPP25/25.0、Qi2(15W)は2.0.0/MPP/15.0が目安です。あわせて、スマホ側が25Wに対応していることと、30W以上の給電用アダプターも必要です。
Q. iPhone 12以降なら全モデルがQi2に対応する?
大半のMagSafe対応モデルが対象ですが、全モデルではありません。iPhone 16eのように、Apple自身がMagSafe非対応のQi対応機として区別している例外があります。12 miniと13 miniは上限が最大12Wになる点も含め、型番ごとにApple公式の仕様と対応モデル一覧で確認してください。
まとめ:端末・充電器・アダプターを別々に確かめる
Qi2は、WPCの規格で磁石による位置合わせ(MPP)を標準化し、置きずれを防いで最大15W、Qi2 25Wでは最大25W級まで広げた仕組みです。失敗を減らすコツは、名前の印象で判断せず、①スマホの型番と磁石の有無、②充電器のQi2ロゴとデータベース上の認証区分、③給電用アダプターの出力、を別々に確かめることです。
買い足す前に、まず手持ちのスマホの公式仕様で「ワイヤレス充電の対応規格と上限」を一度確認してみてください。その1行が、充電器選びのすべての起点になります。
参照した公式資料・確認日
- Wireless Power Consortium:Qi Wireless Charging(Qi v2.0の2023年登場、Qi2の15W・磁気アタッチメント、Qi v2.2.1=Qi2 25Wの2025年7月登場・約70%増・約30分で50%、認証品のみロゴ表示可)
- Wireless Power Consortium:Qi Certified Products(認証の意味、「Qi compatible」等の表現への注意、認証製品データベースでの確認方法、旧世代を含む相互運用)
- Wireless Power Consortium:Best Qi2 25W Charging Stations(データベースの読み方=Version/Power Profile/出力、型番で検索する注意、「Qi2 compatible/enabled」は非認証、25Wには30〜40W以上のアダプター、iPhone 17系・iPhone 16系(iOS 26)・GalaxyのQi2 Readyケース・Pixel 10系の対応案内)
- Appleサポート:MagSafe充電器をiPhoneで使う(対応モデル一覧、最大25Wのピーク電力と機種別の上限=Air 20W・iPhone 16/16 Pro 22.5W、12 mini/13 miniは最大12W、アダプター条件、iPhone 16eをMagSafe非対応のQi対応機として区別)
- Appleサポート:iPhoneを高速充電する(iPhone 15以前はMagSafeと20W以上のアダプターで最大15W、iPhone 16/17/Airのワイヤレス高速充電の条件)
資料確認日:2026年10月24日。この記事は規格と対応確認の解説であり、特定製品の実機レビュー・充電時間の実測ではありません。対応機種・上限W数・認証区分は変更される場合があるため、購入時は各公式仕様とWPCの認証製品データベースで再確認してください。